高齢者70歳引き上げを提言!!経済財政諮問会議で一番ペラい資料を出した人は?・・・


「高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべき」

先日(2024年5月23日実施)の政府の経済財政諮問会議での発言が思わぬハレーションを起こしている。

経済財政諮問会議とは、総理大臣を議長とし、内閣官房長官や経済産業、総務、財務の3大臣、日銀総裁、そこに民間から選ばれたメンバー5人を加えて構成される機関で、この国の未来像を決める会議とされている。

ちなみに今のメンバーは以下の通り。

国会議員

岸田総理大臣
林官房長官
新藤経済再生担当大臣
松本総務大臣
鈴木財務大臣
齋藤済産業大臣

植田日本銀行総裁

民間議員

十倉 雅和 住友化学 会長
中空 麻奈 BNPパリバ証券 副会長
新浪 剛史 サントリー社長
柳川 範之 東京大学教授

冒頭の提言は国会議員側から出たものではなく、民間議員側からの発言。

現行、高齢者は65歳以上と定義されているので、これを5歳延ばすと70歳ということになる。

これをもってマスコミ報道では、

・年金を70歳開始にしたいのだろう

・死ぬまで働けってことか・・・・

等々のネガティブなものが目立つが、経済財政諮問会議が出している諸々の資料(第六回会議結果)に目を通すと、何もそこまでのことを言っているわけでもない。

資料内で取り上げられている統計では「65歳以上でも労働意欲が高い」という結果となっており、であるならば65歳を老人扱いするのではなく、現役並みの戦力として扱っても良いのでは?という、取りようによってはポジティブな内容だった。

但し、そのためには現行の社会保障制度を抜本的に変える必要がある。そんな話だった。

今のルールでは65歳以上で収入があると年金を減らされたり、高収入の場合、まったく貰えない。

そうなると「勿体ないから働かないほうが・・・」という心理的なバイアスがかかる。

能力のある人の勤労意欲を国の制度が削いでいるようでもある。

同じような話はいわゆる103万円の壁、130万円の壁といった「主婦の働き控え」にも共通する問題で、先の発言が民間議員(経済界)から出たという事情もこのあたりにありそうだ。

民間議員の中の住友化学の十倉会長は経団連の会長でもあり、普段から歯に衣着せない発言で知られているし、サントリーの新浪社長も45歳定年説で最近炎上したばかり。

要は

国民のやる気を国の制度が足を引っ張ってどうするんだ?

更に両者(企業経営者)の本音を推察すれば、

お前ら政治家が選挙のために国民を甘やかしてばかりいるからどんどんダメになっちゃうんだよ!!

というところかもしれない(あくまで私の推測)

確かに、これだけ個人のライフスタイルが変化する中で、旧態依然とした

・主婦の収入は100万円くらいでしょ?

・老人は65歳で引退してゆっくり過ごすものだよね?

という価値観を、制度が裏付けしてしまっていることには違和感がある。

だが、これらの改革をするのは至難の技だろう。

103、130万円の壁を取っ払えば「弱者イジだ!!」と叩かれ、年金関係に手を入れれば「高齢者イジめ!!」と大ブーイング。

これらのことを口に出して選挙に勝てる政治家などいない。

「弱者保護」が高度に複雑化した日本社会ならではの難しい問題だ。

ちなみにこの会議、各議員が各々の考えを述べるために個別に資料を出すのだが、その内容が意外と面白い。

十倉会長提出の資料はかなりちゃんと作っており(まさか本人が作っているわけでもなく、経団連のブレーンが作っているのだろうが)、逆に新浪社長提出の資料は流行りの言葉を並べただけで、かなりペラい。

個人的に最も秀逸と感じたのは、民間議員の連名で出されたリスキング(学び直し)に関する資料で、何歳になっても新しいスキルを学ぶことの重要性が様々な統計から裏付けされていて、眺めていても参考になる。

文末に「海外の事例」として、2014年から始まったシンガポールのリスキング政策が掲載されているのだが、国営の「Skills Future」というスキル訓練講座(2万4,000超のコースがある)専用で使えるクレジットを全国民(25歳以上)に500シンガポールドル(約5万円)配っているそうだ。

更に40歳以上は4000シンガポールドル(約40万円)を上乗せ。

使う、使わないは本人の自由だが、タダで貰えるため「使わないと勿体ない」というバイアスが生まれ、現在では生産年齢人口の25%、4人に1人が活用しているとのこと。

日本の職業訓練のように「勉強すれば1/2を出す」というような「後払い」ではなく「先払い」という手法で、同じ「リスキング」、「バイアス」という話でありながら、その成果は大きな差がある。

まさにこれこそ政策だろう。

日本でも是非導入して欲しい。

 

総理直々に経済や財政について諮問する「経済財政諮問会議」

もうこの言葉自体が胡散臭く、根拠なく叩きたくなる気持ちも分からないでもないが、民間は民間で政府を動かそうと結構本気でやっているようだ。

もしお時間があれば、資料でも眺めて頂きたい。

経済財政諮問会議 第六回会議結果

本日のコラムでした。

 

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5月 25th, 2024 by