時給100円。月給1万4000円。
どんなお仕事だと思いますか?
アジアやアフリカの最貧国の話じゃありません。
日本国内の障がい者福祉施設のお給料です。
DMの封入作業や、木工、ダンボールの組み立てなどの軽作業。
これらの仕事を月曜日から金曜日まで10時から16時まで行って受け取れるお給料です。
本日は障がい者支援ビジネスを展開する株式会社テミルの中尾さんから、障がい者のお仕事についてお話を伺ってきました。
加藤:中尾さん、お久しぶりです。
テミル 中尾さん(以下、敬称略):どうもご無沙汰してます。加藤さん、お元気そうですね!!
加藤:ええ、なんとかやってます(笑)
さて、今日は障がいのある方のお仕事についてお話を伺えればと思っています。
まずはテミルさんがどんなことをやっていらっしゃるのかを教えて下さい。
中尾:一言で言えばテミルは障がい者支援を行っている会社です。
一番分かりやすい事例で言うと、クッキーなどのお菓子を作っている福祉施設さんと協力してます。
加藤:お菓子ですか?
中尾:はい。お菓子を作っているところって結構多いんですよ。バザーとかで一袋100円くらいで販売するんですね。手作りならでは素朴な味で美味しいのですが、単価も安く、販路も限られているので、そこまで売上が上がりません。そのため、月給14000円になってしまいます。
加藤:そのお給料を始めに聞いた時はビックリしましたが、クッキーをバザーで売るだけであれば確かにそれくらいでしょうね。。。。。
中尾:そこでテミルでは著名なパティシエにレシピを監修してもらいました。まずは味が重要ですからね。そしてパッケージも有名な絵本作家やイラストレーターにお願いし、デパートの催事場やECサイトなどの販路を開拓しています。
加藤:確かにオシャレですね。きっちりブランディングをするってことですか?
中尾:そうですね。味と見た目を引き上げ、しっかりとした販路で販売することで、1個1000円、2000円で買っていただけるようにしています。
加藤:先ほどお土産で頂いたものを食べましたが、本当に美味しいですよね。
お土産で頂いたクッキー ザクザクとした食感、それでいて味は濃厚。なかなか食べたことのないクッキーです。
中尾:ありがとうございます。味、見た目が良くなれば結果的に売上も上がり、働いている方々に還元できる。そういう仕組みです。
加藤:実際、どの程度上がるものなのですか?
中尾:はい、試行錯誤しながらなので、まだ成果が出ているところと出ていないところがありますが、月給1万円が4万円になった、という例もあります。
加藤:4倍ですか?凄いですね。
中尾:ええ、働いている方も喜んでいらして、本当に良かったです。でも我々としてはお金の部分だけを追求しているわけではないんです。
加藤:と言いますと?
中尾:最終目標は「障がいのある人ももっと社会とかかわって生きていける世の中を作りたい。」っていうことです。
ちょっと話が変わってしまうのですが、日本の福祉って「障がい者は弱者」、「守ってあげないと」という発想なんですね。
でも7年間この事業を通して、障がい者の方々と接していると彼らは決して弱者ではありません。
と言うのは、お菓子作りってもの凄く神経使うんですね。
例えば1000枚のクッキーを作らないといけない。ようやく100枚焼けた。そんな時に加藤さんなら、どう感じますか?
加藤:うーん、そうですね。まだ1/10かよ!!とか、あと900枚も作るのか。。。。とか思うでしょうね。
中尾:ですよね。私も一緒です(笑)そして、もっと早く出来ないかなーとか、効率のことばかり考えちゃうと思うんですよ。
でも障がい者の方って1枚1枚なんです。その1枚を真剣になって作る。それが終ったら、次の1枚って。それを1000回繰り返すんです。
もちろん時間はかかりますが、とにかく丁寧なんです。
加藤:私には絶対出来ないですね。
中尾:レシピを監修して頂くパティシエの方々も「お菓子作りに真摯に向き合う姿勢にこちらが学ばせてもらった」とおっしゃいます。
やはり健常者に比べれば出来ることは限られますが、出来ることも沢山あって、加藤さんもおっしゃる通り、ある場面では健常者も「真似できないくらい」の能力を発揮することもあるんです。
加藤:なるほど。しかし日本の行政も世の中も「障がい者=弱い」と決めてかかっている。ということですね?
中尾:はい。もちろん障がいの程度によっては、行政が完全に守ってあげないといけないケースもありますが、障がい者の強みを活かして「仕事にマッチ」すれば、十分社会と繋がって生きていける人も多いんです。
加藤:確かになんとなく隔離されている印象はありますね。日本だけなんですかね?
中尾:そうですね。欧米では障がいがあっても「これが出来る」「じゃあやって」という感じで仕事があります。
それに対し、日本はとにかくオールマイティーを求めますよね。
突出した能力が必要なのではなく、何もかも平均点以上でないといけない。というような風潮があって、その観点から言えば障がいがあるだけで落第です。そういう考え方も障がい者の社会進出を妨げているような気がします。
加藤:まあ、企業もそういう「何でもそつなくやる人材」が好きですからね。
中尾:確かに(笑)
しかし、そればかり突き詰めてしまったら「出来ない者が排除される社会」になってしまうんじゃないかと思うんです。
スタメンばかりのチームが決して強いわけではない。ハンディがある方も受け入れ適材適所で活躍してもらえる社会こそが強いのだと思います。
加藤:その通りですね。実際に障がい者の方々と一緒に働いて、どのようなことを感じますか?
中尾:障がい者の方々って、近くで接すると本当に幸せそうなんですよ。もの凄く一生懸命に仕事をする。人の笑顔に素直に喜ぶ。私自身、彼らから「足るを知る」ということを教わりました。
加藤:足るを知る。良い言葉ですね。
中尾:ええ。本当にそうなんです。お給料が1000円上がった。家に帰ったらご両親から褒められた。
そのことをとても嬉しそうに話してくれます。
些細なことにも幸せを感じることが出来るって素晴らしいことですよね。その重なりが本当の幸せだと思うので。
加藤:僕なんか外資系の生保で金まみれの生活送ってきましたから、些細なことで幸せを感じる人なんていませんでしたよ(笑)
中尾:ええー(笑)逆にお聞きしたいんですけど、そういう人たちって疲れないんですか?
加藤:鋭い質問ですね。疲れ切ってると思いますよ。常に「ここから落ちるかも」という恐怖心と戦わないといけないんですから。
中尾:楽しいんですかね?
加藤:初めは楽しいでしょうね。でもだんだん同じ刺激じゃ楽しくなくなる。だからドンドン上を目指す。そして疲れきる(笑)
私も外資系の生保で11年間、3000人の営業マンが日々ランキングされているような世界にいましたが、「これ、どこまで続くんだろう?」ってふと思っちゃうんですよね。
中尾:なるほど。実は私も同じような経験があって。私、地方の超進学校の出身なんですよ。
それこそ県下で2~3番の高校で、しかも特進クラス。
加藤:へー、優秀なんですね。
中尾:でも、その中では落ちこぼれの方で、大学も希望していたところにはいけなかったんですね。
それが凄い恥ずかしくて、超学歴コンプレックスだったんです(笑)
しかしその学校で障がい者支援に人生を賭けてこられた先生方にお会いして、もの凄い影響を受けたんです。
そして授業の一環で障がいのある方々と接すると、ハンディキャップがあっても一生懸命仕事して、一生懸命生きている。私たちと変わらない。
ああ、私は人と自分を比較して落ち込んで何て小さいんだろう。って思ったんです。
加藤:凄い分かります。僕も自分で会社始めて、色々大変なこともありますが、楽になった部分もあるんです。人と比較されなくて良い。自分を大きく見せる必要がなくなったというか、等身大で良い、というか。上手く言えませんけど(笑)
中尾:それも「足るを知る」ってことじゃないですか?(笑)
加藤:障がい者支援一筋の中尾さんと、魑魅魍魎うごめく外資系金融の私が同じ結論というのも照れますね(笑)
中尾:突き詰められば幸せなんて単純なのかもしれませんよね。
加藤:最後に今後の活動を教えて下さい。
中尾:はい。これからはお菓子だけでなく、同様のスキームを使って木工の小物なども手がけていきたいと思います。アクセンチュアさんなどの大手企業にもご協力頂いてますので、もっと色々なところを巻き込んで、ハンディがある者でも活躍できる社会を目指していきます。それが、結果的に全ての人が活躍できる社会だと思うので。
加藤さんも何か協力して下さいね!!
加藤:もちろんです。私、セールスしか出来ませんが、何か売りたい物あったら言って下さい。
中尾:是非是非。私たち口ベタなので、そういうの苦手ですから。
加藤:口ベタ?。。。。十分、ご立派に喋ってますよ。。。。
中尾:あっ、そうですか?(笑)
株式会社テミル 通販ページはこちら
編集後記
今回は株式会社テミルの中尾さんから、障がい者のお仕事についてお話を伺いました。
とても明るく溌剌とした素敵な女性です。
高い理想を掲げ、協力者を巻き込み、問題を解決していく。同時にビジネスとして成立させる。
簡単なことではありません。
しかし
障がいのある方のために、社会を変えたい。
真っ直ぐに私の目を見て、迷いなくそうおっしゃる姿に、志と行動力をヒシヒシと感じます。
「ああ、この人なら皆さん協力するだろうな」
と思うと共に、私自身も大ファンになりました。
また今年からご自身が代表のNPO法人「ディーセントワーク・ラボ」も立ち上げ「働きがいのある人間らしい仕事」の普及を目指し、今まで培ったノウハウを民間企業に活かすための活動を始められたそうです。
年齢は30代前半とお若いですが、お話を伺ったこちらの背筋がピンとのびる。そんな方です。
NPO法人ディーセントワーク・ラボのサイト
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